よしぶえ No.28 2001 WINTER

冬の陽射し

詩:瀧克則 写真:細川和昭

サッカー・ラグビーコートは人気が高い(木屋元地区)

川面がきらきら光っている
枯れた芝生には
夜をかぶせたように霜が降りていて
冬の陽射しを吸い込んでいる

額の汗がきらきら光る
土にしみこんだ星の記憶を
若い脚が蹴っていく

かっては葦の群れが生えていて
その湿った根元を
若い獣の脚が駆けめぐった

川面がきらきら光っている
泥に汚れたボールが跳ねる
初老の写真家が日がな一日
冬の光を探している

目次

淀川河川公園ニュース イベント案内 淀川の野草 淀川歴史散歩 淀川河川公園と私

毛馬閘門

淀川河川公園・毛馬地区の下流側には淀川大堰や毛馬閘門があり、大川(旧淀川)と新淀川(現淀川本川)に分かれる。本川に架かる淀川大堰は洪水対策だけでなく、塩水の遡上防止・都市用水等の取水や水位保持・渇水時の都市用水確保の機能を持つ大切な堰。本川と水位の異なる大川に架かる毛馬閘門は船の航路を確保するための施設で、本川と大川の水位を調節して船が自由に往来できる仕組みになっている。

大川に下る毛馬閘門の船

淀川河川公園ニュース

淀川河川公園リレーマラソン

12月10日(日)、小雨が降ったりやんだりする中、リレーマラソンが淀川河川公園・太間地区の1周2kmの特設コースで行われました。リレーマラソンは42.195kmを1チーム4人以上10人以下でタスキリレーし、4時間以内に完走するもの。総合部門の他7部門にエントリーした参加者は162チーム・1,216人で、1チーム平均最年少は5歳、最年長は67歳。3連覇に輝いた総合部門1位の「あいな工房倶楽部」は昨年の記録更新はならなかったが、2位に7分以上の差をつけました。また、特別賞に選ばれた「USJ美女チーム」はモーニング娘。に扮して会場から大きな拍手が送られました。

★総合部門順位★
1位  2:19:23  あいな工房倶楽部
2位  2:26:58  チームPAX・ジョニ黒
3位  2:28:33  南港&谷町RC
小雨の中、スタート
同時ゴールしたモーニング娘。?

第63回 淀川の自然を楽しむ会

11月19日(日)、淀川河川公園海老江地区で「海に近い川」をテーマに淀川の自然を楽しむ会が催されました。参加者は小学生から82歳の高齢者まで総勢68名。快晴ながらやや肌寒い北風の中、10時から数班に分かれて水辺を中心に観察開始。実をつけたハマユウの周囲に落ちた実から根の出る状態を観察し、図鑑では判らない情報に参加者は感動。また、どこまでが川か、を調べたグループは川の水が程よい塩味がすることや上流の十三大橋付近までフジツボがあることからこの地区付近は海と判断。ルーペを片手に拡大された貝や虫、草を覗き込み、驚嘆の声をあげた1日でした。

手作り竿で釣りを楽しむ参加者達

ジュニアテニス大会

“初心者、集まれ!”と11月12日(日)、ジュニアテニス大会が外島地区で開催。空振りばかりでもOK、ダブルフォールトで終わってもOK-こんな子ども達が集まって日頃の腕前?を競い、珍プレーに歓声が上がりました。また、この大会をはさんで淀川河川公園テニス大会男子ダブルスが9月3日・赤川地区で、同女子ダブルスが11月13日・外島地区でそれぞれ開催されました。

成績発表に拍手するチビッコプレイヤー
★淀川ジュニア初心者シングルス★
[小学生女子]
1位 栗林千聡(瑞光)
2位 松田菜那(豊中)
3位 米田采未(ニッセイフレンド)
★淀川ジュニア初心者シングルス★
[小学生男子]
1位 那須智行(瑞光)
2位 今井弘樹(ニッセイフレンド)
3位 西野 懸(ニッセイフレンド)

第4回 大阪・淀川市民マラソン

11月5日(日)、日蘭交流400年記念・日蘭交流友好杯として淀川市民マラソンが枚方地区~十三野草地区の20地区の公園間で、フルマラソンとハーフマラソンが行われました。参加ランナーは約4,000人。今回のコースは例年と違って、堤防よりの河川管理用道路から川沿いのルートに変更。また、日頃は渡れない毛馬閘門・淀川大堰からは大阪市内の高層ビルを見ながらのランニングとなり、淀川ならではのマラソンになりました。この大会は先導車に電気自動車を使用し環境に配慮した、市民の手作りマラソンとして人気を博しています。

淀川大堰を渡るランナー達
★フルマラソン[男子]★
1位  2:29:26  萩野 浩(名古屋市)
2位  2:38:34  金田仁秀(箕面市)
3位  2:40:59  吉田福蔵(川西市)
★ハーフマラソン[男子]★
1位  1:12:41  吉田 章(高槻市)
★フルマラソン[女子]★
1位  3:06:41  松村政子(吹田市)
2位  3:12:57  大谷ひろみ(寝屋川市)
3位  3:14:39  森下伸子(貝塚市)
★ハーフマラソン[女子]★
1位  1:18:55  萩野さとみ(名古屋市)

イベント案内

2月4日(日)

第6回淀川河川公園凧揚げ大会(太間地区)

2月18日(日)

第23回寝屋川ウィンターフェスティバル(太間地区)

2月25日(日)

第64回淀川の自然を楽しむ会-草や木と遊ぼう-(伊加賀野草地区)

淀川の野草

文/有馬忠雄

イヌコウジュ

秋の高水敷きの、草むらが何かで壊された所が煙るような紫色に染められていることがある。イヌコウジュの群生である。植物の名前に「イヌ」が付くのは、役に立たないという意味が込められている。群生地の紫は役に立たないどころか、気分を引き立ててくれる一服の清涼剤である。地方名にニセハッカがあるが、ハッカに似てはいるものの、そんな香りはないのだ。

オオオナモミ

子供の頃、刺だらけの実を女の子の髪にくっつけてひどく叱られたことがあった。今でも腕白(わんぱく)達は「ヒッツキムシ」と名付けて衣服などにくっつけて遊んでいる。昔も今も遊びは変わらないのだが、昔投げたのはオナモミ、今投げているのが、オオオナモミなのだ。それとは知らない内に植物の方は変わってしまっていて何か不思議な気がする。北米原産の一年草。地方名にサンパツとかドロボウなどがあるらしい。由来を聞いてみたいものだ。

セイタカアワダチソウ

花粉が飛んで喘息を引き起こすというので有名になった北米原産の多年草。「公害草」という可哀想な名前までもらってほんとにお気の毒。黄色な花が咲くということは花粉を昆虫に運んでもらうということ。風が運ぶのではない。すなわち、花粉は飛ばない。当時あまりの繁殖のすごさに驚いて、公害草に仕立ててやれば根絶やしにしやすいと考えた人がいたという事なんだろう。アメリカでは、州の花にしているところもあるというのに。

セイタカヨシ

背の高いヨシ。芸のない名前だ。別名セイコノヨシ。西湖(中国の湖)に生えているから。と言われても、西湖を見たことのない人には分かりにくい名前だ。地上を這って行く茎で繁殖地を広げる。茎はヨシよりも太いのに、刈り取った茎が乾くと萎(しな)びてしまうので利用しにくいのだそうだ。子ども達がこれを使ってパンの笛(ギリシャ神話の牧羊神が吹くたて笛)を作った。が、茎が萎びるに連れて音程が変わっていくので苦心していた。

淀川歴史散歩―第14回―酉島みらい堤とその周辺

記:細川和昭

酉島みらい堤[A]

平成7年1月17日の阪神淡路大震災で、淀川は河川堤防等に大きな被害を受けた。その後、19箇所で災害復旧工事が行われたが、中でも、淀川左岸河口部の酉島地区の被害が最も甚大。酉島地区の堤防は、明治36年に新淀川(現・淀川本川)が開削された際の堤防が、地盤沈下や高潮対策による嵩上げ等で積み重なった構造になっていた。被害の原因の一つがこの堤防直下に存在する砂層が液状化したものと考えられ、地盤改良を施して、環境に配慮した緩傾斜・土構造堤防として復旧が行われた。一部が階段護岸の緩い芝斜面の堤防は川へ近づきやすく、水に親しめる新しい堤防となった。震災から1年2ヶ月後の平成8年3月末に完成。愛称の「酉島みらい堤」は一般公募による。

子ども達の手や足型の陶板をはめ込んだ「酉島みらい堤」

伝法川跡碑[B]

伝法大橋・阪神西大阪線が淀川を跨ぐ左岸付近の伝法は大阪の港として江戸中期まで栄えた所。船が往来した伝法川も河村瑞賢によって安治川開削(1684)以降はさびれていった。伝法川は正蓮寺川・森巣橋付近で分岐、西流して新淀川に合流。その長さ1km余り。高潮が発生すると伝法川は侵入路となって逆流、大きな被害をもたらすため昭和26年11月に分岐から900m程が埋めたてられた。残りの200m程は舟溜りとして利用され、東側に隣接する伝法西公園はその名残。かつての川筋には、正蓮寺川と分岐する剣先に船待ちの人達が建てた鴉之宮や舟人・漁民・廻船商人らが参詣し、「摂津国舟寺」と呼ばれた淀川近くの西念寺など由緒ある社寺が今もある。また、ある建築会社の寮(現存)の2階からは釣り糸を垂れ、魚を釣ったという記録が残る。正蓮寺では毎年8月26日「伝法の川施餓鬼」を行っている。なお、伝法川跡碑(昭和34年1月建立)は鴉之宮東側に建つ。

伝法川跡碑

澪標住吉神社[C]

阪神・伝法駅東側近くに建つ澪標住吉神社は人生の航路で心の拠り所にする神社。船の航路標識をさす澪標(みおつくし)と古歌で歌われた「身を尽くし」の一節にかけて名付けられたとか。澪標は航行する船に通りやすい深い水路を知らせるもので、千年以上の昔に難波(なにわ)に建てられ、当神社東の浜辺にも大きな澪標があった。神社の鳥居をくぐると左手に1m余りの木製の澪標が立ち当時を忍ばせる。現在使われている大阪市章はこの澪標をデザインしたもので、明治27年、商業都市は港から、と大阪市議会が市章に採用したもの。

澪標住吉神社

淀川河川公園と私

川は子どもを育てる、動植物にも大切な環境。

小学1年生までの間に川で遊んだ、という記憶が私にはない。しかし、小学2、3年生の2年間、疎開した大分県の田舎には近くに川が2本あったので、川と魚がすぐ好きになり、洪水も体験した。中学、高校生時代は、私は宝塚に住んでいたから、川といえば武庫川、夏には毎日のように川で遊んだ。

あの頃、私がよく出かけた武庫川の行動圏は宝塚から上流側に道場までの間で、中流域の魚類を楽しんだ。この地域では開発がまだほとんど行われていなかったから、現在の住宅地域の大部分が山地や農地だった。したがって、昆虫や野鳥もごく身近だった。

一方、淀川は、阪急宝塚線の車窓から見える、とらえどころのない大きな川であった。「とてつもなく大きな鯉が釣り上げられた」という話や記事に驚いたのをおぼえている。

私の体験からすると、小・中・高校生ぐらいの年齢期に川に親しむことは、その人の自然観の形成にたいへん影響があると思う。そして、小・中学生ぐらいの人が川に親しむ環境としては、大きな川の下流域より中流や上流域の方が適している。
このように考えたとしても、桂・木津・宇治の三川合流域以下の大河淀川とその河川敷の公園は大都市大阪と近域の多くの人たちにとって重要な場所であることには変わりはない。

この30年間、私は主に鳥類の研究・調査をしているので、川とのつきあいはそれまでと少し異なっている。川は、もともと、鳥類のほか様々な生物の生息環境としても大切である。『淀川河川公園利用マップ』には、阪急線が淀川をこえる所のすぐ上流側左岸に「ヨシ群落」、「冬期にカモ類多い」と記されている。確かにこの区域はカモ類のよく集まる水域で、ここのカモ類を見て冬を感じる人は少なくないだろう。
淀川河川公園は、立派な球技グランド等施設地区から野草地区まで多様に公園化され、よく利用されている。いつも狭い場所でしか遊べない都市の子ども達が、この広い公園で走りまわっているのは本当にいいことだ。

1990年に建設省河川局が『多自然型川づくり』を打ち出した。これは、一般人にはあまり知られていないが、画期的なことだと私は思う。この施策の思想に照らして、最後に、鳥類研究者としての淀川河川公園についての希望を2つだけ述べさせてもらう。

1.これだけ広い河川敷があり、管理体制も整っているのだから、下流域に数10haのコアジサシの集団営巣地を造ってほしい。近年、コアジサシの集団営巣地は開発行為によって世界的に急減し、生息数の減少が著しい。日本では夏鳥として繁殖する渡り鳥である。

2.野鳥生息保護地区を設けることは、もちろん望ましいが、保護地区ではなくても、城北ワンド区に新設された実験ワンドのような、鳥類の生息環境としても適している自然要素が多い岸辺の環境を流域の所々に造ってほしい。

これら2つの地域の造成方法と管理が良ければ、淀川をさらに良い鳥類の生息地にできるだろう。

安部 直哉

野鳥の話をする筆者

ナンバー14

安部 直哉(あべ なおや) 昭和13年1月9日東京生まれ。
大学卒業後7年間は神奈川県水産課の技師として勤務。
以後、主に鳥類の生態の研究、調査を続けている。

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